女医さんのスリッパと中庭と

屋号

この大学病院に母を連れてくると いつも待たされる
で 名前を呼ばれて診察室に入ると 毎度のこと 背後の男だ
若い女医さんと母のやりとりが ウワの空になってくると
じっと 女医さんのスリッパを見つめる
なかなか使いこなされたいい減り方をした美しいスリッパだ
不思議なるフェチな感覚に酔いしれていると
「なにか心配事はありますか」
と 突然問われた
「いや 良くなっているようです」
この適当さに呆れながら 問診は終わる
誰も入らない中庭沿いにコーヒーの自販機があって 
会計を待つ間 一杯飲む 煙草を吸いたいが禁煙
中庭の空は網の青空 鳥や猫や人が落ちてこないように なのか
帰りはいつも娘が嫁いだ店に寄り 昼飯と晩のおかずを買って帰るのだ



中庭


青空の網