この景色の真ん中に煙突があった

hirobumisuzuki2006-02-01

この景色の真ん中に煙突があった。
朝焼けに燃えて、黒々と、突っ立ていた。
だからこの2階の窓辺の頁は赤くなる。
煙突があった頃、その下ではとろけ出した鉄が陽炎を創る。
側を流れるどぶ川縁に男達は座って、夜明けを待っていた。
いつ煙突が消えたのか定かでない。
今はバカでかい磁石が、鉄くずを吸い付けているだけ。
次第に遠のいていく記憶の中で、男達も姿を消して、どぶ川もなくなった。
でも春になると陽炎だけは残っている。
もうすぐその季節がやって来る。