古い2階の灯りは今日も足元を照らす

hirobumisuzuki2006-02-02

この家は2階が二つある。古い2階と新しい2階。
新しいといっても36年も前に建て替えられた。
ということは古い方は大戦直後のものか。記憶にない。
だから階段も二つある。
古い階段は狭く、下の方で直角に曲がる。
大戦直後の2階は祖父の遊興の場であった。
といっても小唄や民謡などの習い事の場として
また、近所の工場主や店主との麻雀の場であった。
今も壁に階下の者を呼ぶ呼び鈴の痕がある。
中学生の頃、家庭内ジプシーだったから、この2階の廊下で寝た。
蒲田で買った貧弱なイーゼルを立てて、油絵の具のケースを開いて寝るのだ。
充満する油の匂いにむせかえるように、暑苦しい夢ばかりみていた。
今は老いた父がひとり 寝ては食事をとっている。
そして古い2階の灯りは今日も父の足元を照らし続けている。