面会謝絶

煙りの町

母を連れて父のもとへ
母の歩みはよりいっそう遅くなった
ふと気がつくと はるか後ろを歩いている
普段共に歩くことなどないから おいおいと思う
歩こう会とかいうのを主宰して 鷹取山など登っているはずなんだが
こっちが速過ぎるのか
とにかく歩いたり止まったりさがったりしながら病室に着く
父の目は元気そうだった が
二人を見るなり書くものをよこせ というしぐさををする
側にあったボードとペンを渡す
「面会謝絶」
きったねえ字だ
医師も看護師もなにも言ってないのに 患者自ら
面会謝絶とは そーきたか という感じだ
まあ 考えてみればいてもばい菌をばらまくくらいだろうが
母を連れてそそくさと帰る 
「ありゃあ、元気だよ」
と 歩きながら後ろの方で母が言う