白い風

門樹

白い風が吹いていた
いくつもある病室の窓や扉は開け放たれて
白い風が 天井低く吹いていた
午前中 母親と見学した老人病院
まだ彫られたばかりの地蔵のような顔をしたおばあさんが
エレベーター前に 車椅子に乗っていた
自我を失いながらも 生き続けている人ばかりだ


こんなところに親父を入れられない


母と同じ意見だった
まだ自宅には 生暖かく 臭い風が吹いている
オレの息や 母親の体温が 生きている

なんとかやれるだろう と母と思った