不思議な薬局

不思議な薬局の壁飾り

一間もない ドア二枚分の入り口を開けると
初老の男と少し若い白衣の女性が 薬棚を要領悪く整理していた
客は母親と二人だけなのに やけに狭く感じる
院外処方箋を渡して 汚い椅子に座ると どうも落ち着かない
視界の片隅で なにやら 音もなくふにゃふにゃ動いている
テレビの上にそれらは 実に雑多に置かれていた
音に反応して動く玩具だ
昔 そんな作り物の花があったのを思い出した
しかし テレビは消されているし 客は二人だけだし
大声をあげているわけでもなく その中はいたって静か
時折 前の道路を走るトラックの振動を感じるくらい
この人形たちは いったい何に反応してふにゃふにゃ動いているんだろう
と思う
目に見えない 耳にも聞こえない 体にも感じない 何か
そこで考えを止めた


ふにゃふにゃ人形たち