断片

やわらかい陰

棒になった自分が 水に浮くことは出来るが 火を消すことは出来ない
いつまでも輝く太陽は 月の光を邪魔して
深く 悲しい陰をつくる
乾いた道に沿って 墓石のように老婆が立つ
そろそろ夢になってくるころだろう
焦げた靴底から 海は見えない
焼けただれたコインを耳に挟むと 貝が聞く海の音がするはずだ
唇についた土が塩辛い
果てしない思索のベクトル上に 同じように果てしない老いへの不安があり
それらは共振する音叉となって いつもあらゆるところで鳴りだすのだ



照射