電気磁石のある町

電気磁石の館

雨がひどい。大粒で重い雨だ。
2階の便所の窓から、小便をしながら外を見たら、電話線が揺れている。
雨粒はしがみつけずにボタボタと下に落ちる。
この夕方にこれだけ降れば、朝の散歩はなしだな、と少しほっとしたりした。
その数時間後、雨はぱったりと止んでいて、アスファルトの地肌も見えるとは。
生半可な安心などした方が悪い。
いつもの時間にいつもの道を歩く。
二つの公園を一回りして、電気磁石の館の側を通る。
ここに煙突があった。
燃える鉄が道をふさぐこともあった。
年がら年中、シュー、とか、ガキン、とか、ガンガンガン、とか音をたてて。
今は燃えつきたように静かで暗い。しかし
「頭上注意」
とでかい看板があるくらいだから、まだ注意しなくちゃいけない作業をしているのか。
携帯で写真を撮っているとバクがやけに不思議そうな顔をして見ている。
あたりまえか‥‥‥。
彼は早く帰って朝飯が食いたいのだ。
この町は風邪をひかないだろうな、と思った。
みんな無関係な関係で成り立ってきたから。