今日も親父を録る

親父を録る

今日も親父を録る。
おふくろのパンティストッキング・マイクにむかって
訥々と 何度も何度もつっかえながら 艶話を朗読する親父は
まさにその話の主人公である。
好きンなって結婚を申し込んだ五十代の元芸者が
実は義父と息子も同時に結婚をしようとしていた流れる女だったとは、
という話に、嗄れた声が妙にぴったりとくる。
たまに新劇の技にはまり、少々過剰表現気味になって、声がうわずったりするが
なんだか、もう、なんでも許せる。
こんなことはもう最後なんだと思うと、自分のデモなんぞ、ほとんど生ギター一本。
もちろん諦めてなんかいない、が、最後だと思っていた方が気が楽に決まっているのだ。
あと数日で無くなるものを、今のうちこのパソコンに詰め込めるだけ詰め込んでおこう。
自分だったらそうして欲しいから。