もしもし、もしもし

電柱

もしもし、もしもし 電話線がゆれる
もしもし、もしもし 誰もでない電話
風の音も聞こえない 屋根の軋みも聞こえない
ただ黒く 醜い鴉の奇声が 塀に跳ね返る
お前に名前はあるのか 
ないのなら静かにとぼけて キョロキョロしていればいい
もしもし、もしもし 大事な話があるんだが
もしもし、もしもし どうか受話器をあげてくれ
大洪水がやってくる そんな話じゃない
悪い夢を見た そんな話でもない
ただ「きみ」としか言ってなかったから
名前を呼びたいんだ
もしもし、もしもし もしもし、もしもし