空に浮く

湿板写真

初めて 空に浮いた 湿板写真の原画というのか
透明の板に自分がいる 摩訶不思議な気分
これがパンフになるという
軽々しく 小狡くて 優柔不断で オチョ−シモノなのに
この写真にすると
重々しく 威厳があって 頑固で 賢く見える
ふと いいのかなあ こんな嘘ついて なんて心にもないことを思う
紫外線に一番反応しやすいらしく 早いもの勝ち か
クジラさんが撮る時 静止時間は15秒だったか
次に回ってきたら 静止時間25秒になっていた
25秒の静止は辛い マバタキはいいらしい 速すぎるから
そんなにゆっくりマバタキをする人間もいないだろう
写真家菅原さんが
「1、2、3、‥‥‥‥‥」
と数えてくれるが 段々首が揺れてくるような気がしてくる
そんな時 何も考えていないポカンとした空洞が 頭ん中にあるのがわかる
だから写真の顔は どこかポカンと 我ここに在らず だ
それが写真に魂を吸い取られた という状態なんだろう
そして 重々しく 威厳があって 頑固で 賢く見える のは
写真であって 自分ではない ということか