海岸通りで首を吊る

首吊りペットボトル

いくら澄みきった青空も この通りでは見えない
首都高速の灰色の腹が見えるだけ
いくら飛ばしても この通りでは速く走れない
すぐ赤になる信号と 巨大なトラックに 道を阻まれる
親父はよく助手席で ひからびた指をこすりながら イライラしていた
ゆるくなった腕時計を見ては「間に合わないぞ」と繰り返し
横入りする車があろうものなら「なんだ、非常識な奴だ」とか言って
ひとり怒っていた
それも懐かしい
今は母が親父の着替えを抱え 自前の座布団を背中にあてて 後部座席にひっそりいる
なんだかんだ考えようとしても 完全に追われている自分がいる
追われながら こなしてゆく自分もいる
金網で首を吊ったペットボトルが並ぶ海岸通りを
そんな自分が今日もハンドルを握り 母を乗せてトロトロ走っている