介護講習壱

築地の雲

腹に刺さったビニール管をぐるぐるにして 薄いテープで貼る
人造人間ビニール管の出来上がり
親父を風呂に入れた 
背中を洗い 頭も洗い ケツまで洗った
前は自分でやってくれよ って言うと
すごい形相でシャワーをぶんどった あはははは‥‥‥‥、、、、、
そりゃそーだよな こんなオレに洗われたくはないだろう よ
どこかふざけた奴だから 油断してはいけねえぜ
失声の風呂場は やけにシャワーの音が響く
何度も胸まで浸かって 気持ち良さそうだ 
風呂が大好きな親父がここにいる
風呂の湯が汚いと 夕方自分で洗っていたこともあった
風呂から上がり パジャマを着て 病室まで歩く
辿々しいが なんとかなるだろう が ここに
バクが飛びついたら 確実に倒れる
家には恐怖がいっぱいだ
最近 天井裏や 階段下に チューチュー ネズミもいるし ね
ベッドに寝かせて腹の絆創膏を剥がす
薄い皮膚がめりめりと絆創膏にひっついてくる
で ビニール管が抜けないように 違う絆創膏を三枚重ねて貼る
人造人間絆創膏だ  疲れた
夜中 煙草を買いに出た帰り
ふと 公園のベンチに座った
もう 空が少し明るい
身体の中に 疲れた胎児を抱えているみたいだ
どこがどうだるいという訳でもないのに
表皮はひりひりしているのに
内側に鉛の頭をした胎児がいるようだ
一服して もう 散歩の時間だな と思った