介護講習其の弐

おふくろの足

「じゃあ 今日はひとりでやってみましょうか」
え そんなこと 聞いていない
額から汗をにじませながら 腹の絆創膏を貼りかえる
なかなか粘着力の強いテープで こっちの指についちまう
で 複雑な貼り方だ
ビニール管が抜けないように三枚重ねでテープを貼る
無事終わって ハンカチで額の汗を拭うと
「はい よくできました 慣れればもっと早くできるようになりますよ」
だと オレは衛生兵じゃない
おふくろは何だか ただぼうっと見ていた
もう何年も使った手先は ぼろぼろなのだ
もういいよ 何もしなくて
とことんのんびり生きてくれ 
レインボーブリッジを見ながら そう思った